当院には、よく眠れないという患者さまが多くいらっしゃいます。
原因としては、多忙なスケジュールや子育て、長い通勤時間などの身体的なストレス、または会社や家庭、ご近所との人間関係からくる精神的なストレスを挙げる方が多いです。意外かもしれませんが、身体の冷えが原因となることもよくあります。
先日いらしたNさんは、主訴として頚肩部の痛みを訴えていました。「首と肩がずっしりと重く、動かすと油を差していない機械のようにキシみ、軽い頭痛がする」とのことでした。また、「夜の寝つきが悪く、眠りが浅い」ともおっしゃっていました。
Nさんの冷えた体とその原因
問診と検査を進めていくうちに、Nさんの手足が非常に冷たいことに気づきました。お伺いしたところ、ご自宅と職場の両方でエアコンが常に稼働しており、設定温度は約22°Cとのことでした。Nさん自身はもう少し温度を上げたいと思っているものの、温度の操作がしづらい環境のようです。
普段、私は院内のエアコンをあまり使用せず、患者さんが来院する直前に急速に冷やし、施術中は適宜調整を行っています。施術中、私は常に動き回っており、患者さんは施術ベッドに横になった状態なので、患者さんに合わせて室温調整をしていますが、それでもNさんは「少し冷える」とおっしゃいます。
「普段、汗をかきますか?」とお聞きしたところ、「ほとんどかかない」とのことでした。また、通常はシャワーで済ませ、お風呂に入る習慣もなく、前回お風呂に入ったのがいつか思い出せないとのことです。
まず体を温めることを優先した施術
最初に、足を赤外線治療器で温めながら、手と足のツボに施灸しました。
赤外線治療器のような機器を自宅でお持ちの方は少ないかもしれませんが、インターネットなどで購入できるレンジで温めるホットパックやヒートパックでも同様の効果が得られます。
ホットパックには、首用、肩用、腰用(お腹にも使えます)、足首用(手首にも使えます)など、さまざまな部位に対応したものがあります。中身にはあずき、大豆、セラミックボールなどが使用されており、香りのついたものや無香のものなど、好みに応じて選ぶことができます。
「首」を温めることが良いとされるのは昔からの言い伝えです。手首を温めることで冷えた指先が温かくなり、足首を温めることでつま先もポカポカしてきます。また、首を温めることで肩周りもほぐれますが、肩そのものをダイレクトに温めるのも効果的です。冬はもちろん、エアコンの効きすぎた夏場の室内でも、冷えた身体を放置せず、この方法で温めることをおすすめします。
ただし、熱めのホットパックを使い続けるとやけどの原因になることがありますので、十分に注意してください。熱すぎるものより、じんわりと温かいものを頻繁に使用する方が効果的です。
続けて、頭頚部のジョイント部や肩部の縁、肩甲骨周囲に約15本の鍼を使用しました。筋層が厚い臀部には10本の鍼を打ち、パルス通電の上から赤外線治療器を当てて患部をじっくりと温めました。
抜鍼後には、首と肩に軽いマッサージを行い、肩甲骨にストレッチをかけて可動範囲を広げました。骨盤周囲については、腰椎や股関節の動きを確認した上で、少し負荷のかかるトレーニングを行っていただきました。
身体を温め代謝を上げるために
この日の施術はここで終了ですが、お身体のさらなる改善を促すために、次回の施術までにご自宅で行っていただきたい宿題をお伝えしました。
皮下脂肪が冷たくなっているNさんには、今後代謝の改善が必要です。これは数回の施術で解消されるものではなく、ご自宅でのストレッチや軽い運動が必要ですが、ご来院以降毎日行っていただいているとのご連絡をいただき、最初のステップを踏み出していただいた、と手応え感じました。
宿題の内容と施術後の症状については、次回のブログでお話しいたします。
BODYWORKS 麻布
田澤 大輔
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